退職して数ヶ月が経ったころ、ふとクローゼットを開けて、ぎょっとしました。
服が、多い。
ハンガーにぎゅうぎゅうに詰め込まれた服たち。色も形もバラバラで、何がどこにあるのかもわからない。「私、いつのまにこんなに買っていたんだろう」と、自分でも驚きました。
繁華街の職場と、ストレス買い
以前の職場は繁華街にあって、休憩時間に気軽に買い物へ出かけられる環境でした。
ランチのついでにショップをのぞく。仕事でちょっとしんどいことがあった日は、帰り際に服や靴に目が止まる。気がつけば「まあ、いいか」とレジへ。
仕事のストレスが、そのまま買い物に向かっていたんだと思います。特に服、靴、バッグ。目に見えてかわいいもの、手に取りやすいものから、どんどん増えていきました。
それでも当時は、「きちんと仕事に行くために必要なもの」という言い訳もありました。
退職後、物欲がすとんと消えた
退職してからは、繁華街へ行くことがほぼなくなりました。
収入は夫の稼ぎ一本になり、自宅で過ごす時間がぐっと増えた。おしゃれをして出かける機会も減り、「欲しい」という気持ちそのものが、不思議なくらい薄れていきました。
買い物でストレス発散ができなくなったわけではなく、ストレスの発散先そのものが変わったのかもしれません。家の中でゆっくりすること、散歩、好きなものを食べること。それで十分になっていったのです。
クローゼットを開けて、改めて気づいたこと
物欲がなくなってはじめて、冷静にクローゼットを見渡せました。
服が多すぎて、何を着るか迷う毎日だったこと。仕事に何を着ていけばいいかわからなくて、同じような服をまた買う、ということも繰り返していたこと。
「選べない」ほど持っているのに、着ている服はいつも同じ数枚だった。そのことに、やっと気がつきました。
半分は廃品回収へ。靴とバッグはメルカリへ
思い切って、服の約半分を廃品回収に出しました。
流行遅れのもの、サイズが合わなくなったもの、なんとなくしっくりこないもの。「いつか着るかも」と思っていたものも、「いつか」は来ないと覚悟を決めて。
靴とバッグは、メルカリへ出しました。通勤で使っていたものたちです。「通勤用のもの、売れるかな……」と正直、半信半疑でした。でも出品してみると、あっという間に売れていきました。
きっと、同じ世代の働く女性が買ってくれたのでしょう。自分が毎日使っていたものが、誰かの毎日に使ってもらえる。それがなんだか嬉しくて、手放すことへの罪悪感が薄れた気がしました。
クローゼットが「見渡せる」ようになって
服を減らしたクローゼットは、ハンガーとハンガーのあいだに隙間ができました。
何がどこにあるか、ひと目でわかる。「今日は何を着よう」と迷う時間が、ほとんどなくなりました。
残っているのは、本当に気に入っているものだけ。着るたびに「これにしてよかった」と思えるものだけ。シンプルだけど、それがいちばん豊かな気がしています。
まとめ――「買わない」は我慢じゃなかった
退職前の私は、買い物でストレスを発散していました。でも今思えば、それで満たされていたのはほんの一瞬だけでした。
退職して、環境が変わって、「買わない」が自然になった。それは我慢でも節制でもなく、ただ「必要ないものを買わなくなっただけ」でした。
クローゼットを整理したら、気持ちまで少し軽くなった気がします。50代になって、ようやく「自分にとって本当に必要なもの」が見えてきた気がしています。


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